日本の病院のかかり方ガイド — 初診の持ち物・受付の流れ・外国人が困らないために
日本で初めて病院にかかる外国人の方向けに、診療科の選び方、初診の持ち物、受付から会計までの流れ、英語対応病院の探し方、夜間・休日の選択肢を薬剤師が整理。
日本の病院のかかり方ガイド — 初診の持ち物・受付の流れ・外国人が困らないために
「熱が下がらない。日本の病院ってどう行けばいい?」
「クリニックと病院、どっちに行けばいいの?」
日本に来たばかりの外国人の方から、薬局カウンターでよく聞かれる質問です。
日本の医療制度は世界的に見て手厚いほうですが、受付・予約・支払いのルールが国ごとに違うため、最初の1回が一番ハードル高いのも事実です。この記事で全体の流れを整理します。
早見表:今日のあなたはどこに行くべき?
| 状況 | 行き先 |
|---|---|
| 風邪・発熱・腹痛などの軽い症状 | 近所のクリニック(内科) |
| 皮膚・目・耳など部位の問題 | 該当する 専門クリニック(皮膚科・眼科・耳鼻科など) |
| クリニックで「大きい病院へ」と言われた | 総合病院(紹介状持参) |
| 夜間・休日で命に関わる症状 | 救急外来(ER) または 救急車(119) |
| 夜間・休日で迷う | #7119(救急安心センター)に電話 |
1. 病院とクリニックの違い
日本では「病院」と「クリニック」が法律上はっきり分かれています。
- クリニック(診療所):病床数 19床以下。町の小さな医院。初診時はまずここへ
- 病院:病床数 20床以上。総合病院・大学病院など。指定された大病院では、紹介状なしで受診すると初診時に所定の追加費用(選定療養費)がかかる場合がある(金額・対象病院は制度改定や病院ごとに異なります)
つまり、いきなり大学病院に行くと割高になります。まずはクリニックを受診して、必要に応じて紹介状を書いてもらうのが標準ルートです。
2. 症状から診療科を選ぶ
迷ったら 内科(Internal Medicine) で大丈夫です。内科医が診て、必要があれば適切な科に振り分けてくれます。
| 症状 | 主な診療科 |
|---|---|
| 風邪・発熱・腹痛・全身のだるさ | 内科 |
| 咳が長引く・喘息 | 呼吸器内科 |
| 胃痛・下痢・便秘 | 消化器内科 |
| 皮膚のかゆみ・発疹 | 皮膚科 |
| 目の充血・かゆみ | 眼科 |
| 耳が痛い・鼻づまり・喉の痛み | 耳鼻咽喉科 |
| 月経・婦人科系 | 婦人科 |
| メンタル・不眠 | 心療内科・精神科 |
| 子どもの体調不良 | 小児科 |
| ケガ・骨折・関節痛 | 整形外科 |
3. 受診当日の持ち物
クリニック・病院ともに、初診時は以下を全部持って行くのが安全です。
- 保険証(マイナ保険証または従来の健康保険証)
- 身分証明書(在留カード/パスポート)
- 現金 5,000〜10,000円程度(最近はキャッシュレス対応のクリニックも増えていますが、医療機関によって異なるので現金を多めに持参すると安心)
- お薬手帳(普段薬を飲んでいる方)
- これまで使っていた薬の現物(飲み合わせの確認に使う)
- 症状のメモ(いつから/どこが/どんな感じか)
英語が不安なら、症状を英語と日本語で書いた紙を持って行くと診察がスムーズです。Google翻訳でも構いません。
4. 受付から会計までの流れ
1. 受付
入口で「初めてですか?(はじめてですか?)」と聞かれます。「はい、初診です」と答えましょう。
保険証・身分証を出して、初診問診票を渡されます。
2. 問診票記入
症状・既往歴・アレルギー・服用中の薬を書きます。日本語が難しければ受付で「英語の問診票はありますか?」と聞いてOKです。観光地・大都市の病院には英語版があることが多いです。
3. 待合
呼ばれるまで待ちます。待ち時間は30分〜2時間が一般的。診察そのものは5〜15分です。
4. 診察
医師に症状を伝えます。事前にメモ/翻訳アプリを準備しておくと落ち着いて話せます。
5. 会計
会計窓口で支払い。処方箋が出る場合は、処方箋を別に渡されます。
6. 薬局へ
処方箋を受け取ったら、院外の調剤薬局(病院隣に大体ある「処方せん受付」の店)に持ち込んで薬を受け取ります。詳しくは日本の薬局の種類ガイドを参照してください。
5. 支払いについて(在住者と訪日客で違う)
日本の公的保険に加入している在住者
- マイナ保険証または従来の健康保険証を提示
- 自己負担は原則3割(年齢・所得により1〜3割)
- クリニック初診の目安:1,500〜3,500円(処方薬は別)
短期訪日の旅行者
- 日本の公的保険の対象外のため、通常は受診時にいったん自己負担で立て替え、あとで保険会社に請求する形が一般的
- 費用は科目・検査内容によって大きく変動します。事前に各国の旅行保険の補償範囲・必要書類を確認しておくのが安心
- 領収書と診療明細を必ずもらう → 帰国後に民間旅行保険へ請求
民間の旅行保険の保険証券だけを窓口に出しても、多くの病院ではそのまま支払いには使えません。書類をもらって、帰国後に保険会社へ請求するのが基本ルートです。
ただし、旅行保険会社と提携している病院では、キャッシュレス対応(窓口で支払い不要)の場合があります。出国前に保険会社へ「キャッシュレス提携病院リスト」を確認しておくと安心です。
6. マイナ保険証への移行について
日本では現在、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」への移行期間にあります。
- 従来の紙・カード型の健康保険証は、すぐに使えなくなるわけではありません。経過措置や資格確認書の運用を含めて、しばらくは併用される段階です
- 長期在住予定の方は、マイナ保険証の利用登録をしておくと、過去の処方歴・健診結果が医療機関間で共有でき、手続きがスムーズになりやすいです
- 制度の細部は改定が入ることがあるので、最新情報は厚労省の案内を確認してください
7. 予約と飛び込みの判断
- 大病院・専門外来:原則予約が必要。電話または病院サイトから予約
- 町のクリニック:当日の飛び込みでも受診可能なところが多い。ただし 午前診療は11時頃まで/午後は19時頃まで の受付終了が多いので注意
- 歯科:ほとんどが予約制
予約の電話がハードル高い場合、オンラインの医療予約サービスを使うか、ホテルのフロント/会社の同僚に電話してもらうのが現実的です。
8. 英語対応の医療機関を探す
日本政府観光局(JNTO)が、外国語対応可能な医療機関を検索できる公式ポータルを公開しています。
- JNTO「Guide for when you are feeling ill」: 日本語以外の対応言語、診療科、保険対応の有無で絞り込み可能
- AMDA国際医療情報センター:電話による医療通訳・医療機関紹介(多言語対応)
- Himawari(東京都保健医療情報センター):東京都内の外国語対応医療機関検索
加えて、各国大使館のサイトに英語対応病院リストが掲載されていることが多いので、出発前にブックマークしておくと安心です。
9. 夜間・休日に体調を崩したら
「平日昼間しかクリニックは開いていない」が日本の医療の弱点です。
選択肢は主に以下の通りです:
- #7119(救急安心センター事業)に電話 — 受診すべきかを相談できます。ただし #7119 は地域により運用や対応時間が異なるため、お住まいの自治体の案内も確認してください
- 子どもの急な体調不良は #8000(こども医療でんわ相談) — 小児科医・看護師に相談できる窓口です
- 休日急患診療所 — 各市区町村が休日のみ運営。市区町村サイトで検索
- 救急外来(ER)のある病院 — 命に関わる症状はここ。ためらわず行く
詳しくは日本で夜間に具合が悪くなったら #7119 を使おうを参照してください。
10. よくある質問
Q. 海外で処方された薬を日本の薬局で受け取れる? A. 日本の薬局で調剤できるのは 日本の法令に基づき、日本の医師が発行した処方せん に限られます。海外の処方箋をそのまま持ち込んで日本で同じ薬を出してもらうことはできません。短期滞在なら必要量を持参、長期滞在なら日本の医師に診察を受けて改めて処方してもらってください。なお、麻薬・向精神薬指定の薬は持ち込みに 「麻薬携帯輸入許可」 などの手続きが必要な場合があります。
Q. 紹介状は必須? A. 特定機能病院や紹介受診重点医療機関などの 指定された大病院では、紹介状なしで受診すると選定療養費という所定の追加費用がかかる場合があります。金額や対象は病院・制度改定により変わるため、受診前に病院の案内を確認してください。クリニック → 紹介状 → 大病院の順が金銭的にもおすすめです。
Q. クレジットカードは使える? A. 大病院では使えるところが多いですが、医療機関によって対応が異なります。最近は町のクリニックでもキャッシュレス対応が増えていますが、現金を多めに用意しておくと安心です(目安:1〜2万円程度)。
Q. 予約なしで何時に行けばいい? A. クリニックは 受付開始の30分前 に並ぶと第一陣で診察を受けられます。土曜日午前中は混みます。
Q. 妊娠中・授乳中だが受診したい A. 受付・問診票・医師に 必ず妊娠・授乳中である旨を伝えてください。処方薬の選択が変わります。
11. すぐに救急受診すべきレッドフラッグ
以下の症状がある場合は、自分でクリニックを探す前に救急車(119)または救急外来へ:
- 突然の激しい胸痛・背中の痛み
- 突然の激しい頭痛(人生最悪レベル)
- ろれつが回らない/手足のしびれ・脱力
- 意識がぼんやりする・反応が鈍い
- 呼吸困難
- 大量の出血
- けいれん発作
- 38.5°C以上の発熱+意識障害
迷ったら #7119 に電話して指示を仰いでください。
出典
- 厚生労働省「医療機関のかかり方」
- 厚生労働省「マイナ保険証」関連通知
- 日本政府観光局(JNTO)「Guide for when you are feeling ill」
- AMDA国際医療情報センター
- 厚生労働省「医薬品の携帯による輸入について」
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的助言に代わるものではありません。診断・治療に関しては、必ず医師にご相談ください。